ジャクリーヌ・デュ・プレと、エルガーのチェロ協奏曲
長男がチェロを習い始めた頃、名演奏をいっぱい聴いてね、とチェロの先生が貸してくれたDVDのひとつに、ジャクリーヌ・デュ・プレが演奏するエルガーのチェロ協奏曲がありました。それをワシは息子から取り上げ、何度見たかわかりません。ほんと、ぶっ飛んだのです。なんという情熱、気迫!チェロと完全に一体化してるというか、身体の一部。気がつくと音楽とすっかり溶合って、演奏者と楽器と音の境界線が消えている。この曲の悲しさをとことんまで引き出していて、魂を鷲掴みにされます。
天才チェリストとして頂点にいたところで、多発性硬化症という難病で身体が不自由になり、演奏家としての生命を絶たれたのが若干27歳。類い稀な才能と情熱と、あまりにもドラマチックな運命!
彼女の演奏をほんの数フィート離れたところで見た私は本当に、見事にノックアウトされました。それはあまりに美しく、霊感に富み、魔法みたいで私は彼女に話し掛けることすらできませんでした。もちろん誰も口を開く者はいませんでした。
ーーロンドン交響楽団のコンサートマスター、ヒュー・マグワイア
クラシック音楽資料館、エルガー : チェロ協奏曲より引用
1楽章と2楽章は繋がってるので、↑コレだけ聴くと、なんか尻切れっぽいっすが。指揮者はジャクリーヌの夫、ダニエル・バレンボイム。若かったのう。。
さて、下のビデオは、天下のヨーヨーマの演奏によるエルガーのチェロ協奏曲。指揮者も上のデュ・プレの演奏と同じ、彼女の夫のダニエル・バレンボイム(随分お歳を召されました)。ヨーヨーマはデュプレが亡き後に彼女のチェロ、ダヴィドフ・ストラディバリウスを引き継いだのだが、この演奏でダヴィドフを使ってるのかどうかは、素人のワシにはわかりません。もうちっとで本気でイってしまうんじゃないかとハラハラするほど、ノリノリですな。比べてどうすか?
ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ (原題;Hilary and Jackie) 」
この映画はどこまで「ほんとう」なのかはわからんのだが、また、なんでこういうアホな邦題をつけたんだか。いつもの事ながら邦題というやつにはガッカリさせられます。で、映画のほうはジャクリーヌの姉ヒラリーとのソウルメイトな関係を基盤においた物語。かなりスキャンダラスな部分があって、あそこまで病的だったとは考えにくいものの、ジャッキーが夫のバレンボイムに「チェロがなくても私を愛してくれた?」と質問し、その返答が「ばかだなあ、チェロと君は一体じゃないか」みたいな反応で傷つき、チェロのない自分は愛されないという苦悩を抱えて精神状態がどんどん崩れていく様子は、実際にあったのかもしれないなあと思う。実際、発病後バレンボイムは愛人を作り子どもまで作って(相手の女性はなんとギドン・クレーメル前妻だって)42歳でジャクリーヌが他界した翌年に再婚しています。天才チェリストは、その輝きと名声の裏で、ほんとうは孤独で愛に飢えていたのかもしれないっすね。つーわけで、またエルガー聴くときに涙でちゃいますねえ。下は映画のトレイラーです。
オススメ:
伝説のチェリスト・ジャクリーヌ・デュ・プレ
オマケ:ジャクリーヌの名前がついたバラもあります
Comments
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もうすぐ ジャクリーヌ・デュ・プレ(白いセミダブルペタルの薔薇です) を皮切りに我が家の薔薇シーズン始まります♪
norikoさん>
そういやのりこさんちは夢のようなバラの館だったんだっけ!!!ジャクリーヌ・デュ・プレ、清楚だけど華やかな素敵なバラですなあ。
私はパブロ・カザルス派だったので、ジャクリーヌの方は全然興味なかったのですが、そんな経緯があったとはほんと知りませんでした・・
バレンボイムってけっこう好きだったのに、そんなことがあったのか・・って感じです(´ヘ`;)
ヨーさんは「弾いている時の顔がコワイ」というコメントをちらほら聞きます^_^;
リベル・タンゴの時も凄かったしね。
でもジャクリーンさんを見てしまうと、確かに物足りなく感じるでしょうね。。
私もまた改めて見てみます。
記事、ありがとさんです(^^)
優月まりさん>
ジャクリーヌはチェリストとして活躍していた頂点で悲劇的に演奏できなくなったっていうストーリーが、さらに彼女を伝説の人にしちゃったんでしょうね。バレンボイムもやっぱり彼女のチェロを愛していたということだったんでしょうか。
ヨーヨーマは、ほんと怖いですよね。なんかワシ、彼がヨダレたらした演奏写真もみたことあるよ(笑)(フォトショプかもしれないけど(笑)) 彼の演奏中の姿をセクシーだという人がいるけど、まさにその最中のような顔ですよね。あはーん。