2010年11月13日(土)ポーランドの現代作曲家ヘンリク・グレツキが76歳でお役目を終えられ、魂の故郷へ帰られました。
Symphony 3 ” Sorrowful Songs “/Henryk Górecki
20世紀クラシック音楽の大ヒット曲、1976年に作曲されたグレツキの交響曲第3番は、クラシック音楽はよく知らんという方でも、ぜひ覚えておいてほしい。イギリスのなんとポップ系ヒットチャートで6位まで上り詰め、アメリカではビルボード200入りこそしなかったものの、クラシックヒットチャートで38週間トップ、そして138週間もチャート内に居残っていたというのが、ドーン・アップショウがソプラノを歌うジンマン指揮のアルバムなのである。
大好きな音楽ではあるのだが、その割にはこの音源しか持っていない。なんとなく他の録音を受け入れられないような気がして。
さて、その交響曲第3番は、「悲歌のシンフォニー」と呼ばれている通り、あまりにも重く辛い3曲の歌から構成されていて、非常に絶望的な音楽ではあるものの、その中に一貫して流れている慈愛に満ちた祈り、それから微かではるけれども確実に存在している癒しへの希望が、美しい旋律の中で光のようにキラキラと輝く。
大ヒットしたがゆえに、頭の固いクラシックファンや評論家からは「大衆受けしたこと=ゴミ」っつー彼等独特のセンスの悪い公式によってコケにされてきたという話もあるが、これだけの美しさと精神性を持った音楽の、どこをコケにしようっつーのか。
第1楽章 レント〜ソステヌート・トランキッロ・マ・カンタービレ『私の愛しい、選ばれた息子よ、自分の傷を母と分かち合いたまえ』
歌詞は十字架にかかったキリストの姿を見た母マリアの歌。心はスターバト・マーテルっすよね。静かに淡々と始まり、主題をくり返しながら徐々に音を増やしていき、そして静寂から、ソプラノが入ってきて、クライマックスへ。。最後にはまた一筋の重い音になって終わる美しさ・・・。動画は約27分の曲の抜粋で、歌が入ってくる部分です。
第2楽章 レント・エ・ラルゴ〜トランキリッシモ『お母さま、どうか泣かないでください』
これが大ヒットになった楽章。
歌の詩は、確実に死を迎えただろう女の子の祈りで、収容所の壁に爪で書かれてあったという。
ナチス・ドイツ秘密警察の本部、第3独房の第3壁に刻み込まれた祈り。その下にヘレナ・ヴァンダ・ブワジュシャクヴナの署名あり、18歳、1944年9月25日より投獄される、と記されている。
第3楽章 レント〜カンタービレ・センプリーチェ『わたしの愛しい息子はどこへ行ってしまったの』
歌詞は、ポーランドに伝わる民謡からの引用で、戦争で息子を亡くし、亡骸さえもどこにあるかもわからないという母の嘆きの曲。淡々と繰り返される音。歌詞は悲しみに満ちていて、この曲で毎回必ず涙腺が壊れてしまう!
そしてこの楽章、急に転調して長調になるんだよね。ここで祈りは届いたというか、救いがあるというか、暗闇の悲しみにパ〜〜っと光が射してくる。ほんっっとに美しいっす。ごめん、語彙乏しくて!
こんな素晴らしい音楽を残してくれたヘンリク・グレツキ氏の冥福を祈って・・・
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