レバノンの詩人カリール・ジブラン(ハリール・ジブラーン)の「預言者」
普通の人生の中でおきてくる様々な出来事について、ふと立ち止まって読むことができる本ですよね。「預言者」なんてタイトルだけど、全然宗教とは関係ない。愛、結婚、子ども、友情、善悪、自由について、与えること、死、祈りなどなど、人間の普遍的テーマ、人の善性について見つめ直すことを促してくれます。2018年、生きる上で何が本当に大切なのかを、あたらめて噛み締めながら過ごしていきたいと思い、新年明けはこの本と一緒に過ごしました。
死について
その中で「死について」のところで、何度も何度も反芻し、お正月早々縁起でもないようだけども、散々思いを巡らしていました。
夫の突然の死後もね、なんとかその現実に折り合いをつけていこうと、沢山の「死」に関する本を読んのね。その中で、カリール・ジブランの「預言者」の中の、死についての短い詩にどれだけ安らぎを得たことか。
死ぬとは風のなかに裸で立ち、
太陽のなかに溶け込むこと
休みなく打ち寄せていた呼吸の波からの解放だ
呼吸は誰にも邪魔されることなく空へと昇り拡大し
神を探し求めにいけるのだ
沈黙の川の水を飲んだときのみ
あなたはこころから歌う
山の頂上にたどり着いてこそ
真に登りはじめることができる
そして身体が大地に還ったときにはじめて
あなたは真に踊るのだ
For what is it to die but to stand naked in the wind and to melt into the sun?
「死ぬとは風のなかに裸で立ち、太陽のなかに溶け込むことではないか?」
And what is it to cease breathing, but to free the breath from its restless tides, that it may rise and expand and seek God unencumbered?
「呼吸の停止とは休みなく打ち寄せていた呼吸の波から解放され
そして何にも邪魔されることなく空へと昇り拡大し、神を探しにいけることではないのか?」
残されたわたしたち家族にとっては忌まわしすぎる苦しい出来事で、底なしの悲しみと絶望へと放り投げられたような体験ではあったけど、これを読むと死は祝福なんだなって。
彼が今、大いなる根源の中に溶けて全体とひとつとなり、究極の幸福の中にいるのではないかと思えるのです。
わたし自身も少しずつ心を身軽にしていきながら、全体に還る魂の準備をしていこうと思うものです。その日がくるまで、ただ生きていくのみです。生まれたからには、この泥沼の世で、いかに美しい蓮を開花させることができるか。
宇宙レベルでみれば、一人の人の死は、たとえば日々入れ替わっている人間の身体の細胞ひとつの死のようなもので、淡々と繰り広げられている宇宙生成の一部というだけ。私たちが死と呼んでいるものは、わたしという肉体とそれにべったりとくっついている自我の消滅に過ぎないわけだしね。
「預言者」の中でアリムスタファが死について「死ぬとは風のなかに裸で立ち、太陽に溶け込むこと」云々の話をするところで、旅立った夫が完全に自由になって全体とひとつになっている穏やかな様子が浮かんだ。辛い早過ぎる死だと思ってたけど、良かったんじゃないかって思いが大波みたいにやってきた。
— 有香ちゃん (@yukarine) 2017年1月19日
苦しみについて
「死について」に関連して、「苦しみについて」をちょこっと引用してみようかな。(訳はワタシ)
Much of your pain is self-chosen.
あなたの苦しみの多くは自ら選んだものIt is the bitter potion by which the physician within you heals your sick self.
あなたの内なる医師が病める自分を癒そうとして与える苦い薬Therefore trust the physician, and drink his remedy in silence and tranquility:
ゆえに医師を信頼し、黙して静穏に薬をおのみなさいFor his hand, though heavy and hard, is guided by the tender hand of the Unseen,
その手がどれほど辛く厳しくとも、それは目に見えない優しい手に導かれているAnd the cup he brings, though it burn your lips, has been fashioned of the clay which the Potter has moistened with His own sacred tears.
そして彼が差し出す杯は、あなたの唇を火傷させるのだが、それは陶工が自らの聖なる涙で湿らせた粘土で作られているのだ
アニメーションのDVD
本は当然オススメだけれど、アニメのDVDがあるのご存知!?ウチにあるから、チェンマイの方で興味があればお貸しするのでどうかご遠慮なく。
アニメといっても子供用ではなく、もっと大きくならんとわからない内容かとは思うけど、あたしゃお孫ちゃんにも送りました。映像が美しいから見ててくれたら、何かインプットされるかもしれないと思ってw 多分父親である長男のほうが喜んでみてるはずです。
ワタシなんて、これ見るたびに号泣っす。ほんと、号泣。
ただ、さすがにアニメでは、ちょっとの詩しか取り上げられていません。カリール・ジブランに触れたことがない方は、ぜひ本を読んでみてください。実はワタシ翻訳本を持ってないのだけど、今回この本を注文してみました。届くのが楽しみ。なにせ「聖書の次に多く読まれている本」ということで、世界中の言語に翻訳され親しまれている本です。皇后美智子様の愛読書でもあるとか。翻訳本も沢山出ているから迷っちゃうよね。
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